私は日々、退去立会い代行と原状回復工事を仕事として行っております。
賃貸不動産をお持ちのオーナー様、不動産管理会社様ともお話をする機会がありますが、客付けに苦戦したり原状回復費が高くて困っていると嘆くオーナーには次の共通している点があると感じています。
■共通点① 原状回復費を抑えるために、工事や修繕は最低限に済ませる
原状回復を最低限しか行わない、中には入居者に請求できた金額の範囲内でしか、工事を発注しないというオーナーがいます。
入居があれば、当然お部屋は汚れ、年月とともに劣化していきます。ガイドラインの範囲にはなりますが、入居者が汚したものは基本入居者負担、経年劣化や通常損耗部分はオーナーが負担します。ですから、お部屋をきれいに維持していくには、入居者が汚した部分はきちんとご請求させていただき、経年で劣化していく部分などは、オーナーがお部屋を入居者視点で維持管理するためにある程度の負担をしなければいけません。
当然、先ほどの最低限の工事、請求金額内での工事を続けていくと「お部屋劣化するスパイラル」にはまっていきます。
例えば、浴室のコーキング部分にカビが生えたとします。コーキングに生えたカビはクリーニングでは落とせません。
カビは入居者の過失ですので、ご請求できます。しかし、オーナーがその請求した金額をケチって、「ちょっとしたカビだから」とコーキングをそのままにして次の入居者に貸し出したとします。当然、次の入居者は入居時のチェックシートに「浴室にカビあり」と記載、もしく写真に収めて保存します。その入居者はカビがあることを認識すると、多少のカビは気にしなくなります。そして退去の時には、カビがひどく広がっていたとしても、入居者が入居時チェックシートに「浴室にカビあり」と記載しているわけですから、もう請求はできません。オーナーはそのカビが広がったコーキング代を自分で負担するか、再度放置するしかありません。カビが広がったことでコーキング代は結局高くかかり、放置すれば次の入居が決まりにくくなります。これが「お部屋劣化スパイラル」です。
このような現場は珍しくなく、私がよく目にするものは次のものがあります。
・鏡のウロコ
・クロスの汚れやシミ
・建具、床のキズやシミ
・水回りのコーキング、ゴムパッキンのカビ
これらは基本的に、すべて入居者過失でご請求できるもの(減価償却の観点はここでは除く)ですが、上記と同じような判断をされているオーナーを時々見かけます。
人間は誰しもが無意識に「きれいなものはきれいにしようとする」「汚いものは適当に扱う」という意識が働いています。
常にお部屋をきれいな状態を維持継続していくコスパの高い原状回復工事の追求。これこそが、長い目で見たときに、客付け含めた費用対効果が最も高い原状回復工事だと考えます。
■共通点② 原状回復の工事日程よりも見積り単価を重視する
工事内容を少しでも安く済ませようと、他社との見積り比較や項目削除などを入念に検討するオーナーがいます。それはそれで構わないのですが、再度現調が必要な要望や他社との比較にクロス単価数10円の差を調べて、そこに1週間、2週間と時間をかける、、、。これって本当にもったいないなといつも思います。大きな工事なら別ですが、クロスの貼替とクリーニング程度であれば、工事が早く終わることを優先すべきではないでしょうか?
そうすれば内見も早くでき、契約につながる可能性も増えます。工事の検討をしている1週間、2週間分の家賃収入を考えたら、その見積り金額をやり取りしている時間や労力は客付けの方に費やし、家賃収入を最大にすることを考える方が優先順位は高いのではないかと思います。
■共通点③ 入居が決まったら、原状回復工事を行う
管理会社、オーナーの中には、原状回復工事をしてもしばらく決まらないかもしれないので、入居が決まったら原状回復工事を行うという方がいます。こういう物件はほとんどの場合、空室率が高いと感じます。やはりきれいなお部屋を実際に見て自分がそこに住んだことを想像して入居を決めるのが基本だと思います。前の方が汚したままのお部屋を見て決める方は少なく、せっかくの見込み客を失うリスクの方が高いのではないでしょうか?
■共通点④ 自分で行う原状回復のレベルが低い
オーナーの中には賃貸物件を自主管理されている方もいらっしゃいます。手間もかかり、なかなか大変だと思いますが、その分管理会社への管理費用や原状回復費用を抑えられるという大きなメリットもあります。また、自分自身でDIYをやったり、掃除をするのが好きというオーナーもいらっしゃいます。まれにプロの職人さんと同じくらいのレベルの技術をお持ちの方もいらっしゃいますが、その場合は非常に少なく、私がいうのもなんですが、レベルの低い状態で終わらせている現場も時々見受けられます。
クロスの貼り方やクリーニングがイマイチですと、お部屋に入った瞬間に何となく、「きれいじゃないな」ということを肌で感じます。おそらくその感覚は、私がこの仕事をしているからではなくて、皆さんが普通に感じ取る感覚のものと思われます。
例えば想像してみてください。窓のサッシの隅々に茶色い砂ぼこりがうっすら見える状態と全くない状態、鏡にカルキのウロコ模様がうっすら見える状態と全く見えないピカピカ輝く鏡、キッチンのシンクのパッキンの隙間に茶色い汚れがほんの少し見える状態と全くない状態、柱の角がふっくらと丸みを帯びて貼ってある壁紙ときっちり角が取れている壁紙、、、。
これらは見る人が、プロであろうが素人であろうが見えるものも、感じるものも同じだと思います。
これらが客付けに影響し、せっかく内見に来た見込み客を失うことにつながっているとしたら、、、何のための自主管理かわからなくなってしまいます。
もし、自主管理するのであれば、きちんとした原状回復を行い、見込み客が「ここは管理が行き届いている!」「きれいなお部屋!」と気持ちが高揚するような原状回復をしたいものです。
今ご自分でやられている「ハウスクリーニング」をプロレベルできちんと学びたい!という方は、是非お問い合わせください。
もちろん、原状回復に関するご相談だけでも結構です。お気軽にご相談ください!
https://wills-pro.com/contact/
■原状回復は物件維持管理のための投資と客付けの一部
原状回復の視点にはなりますが、結論、毎回退去の機会にコスパ良く原状回復工事を行い、入居したくなるお部屋にする。そして退去される方にはその汚した分をきちんとご負担いただく。これが家賃収入の面でも、一番いい賃貸物件管理だと感じています。実際、空室が出てもすぐに客付けができて、お部屋もずっときれいな状態を継続している、そういうオーナー様とお話ししていると、いつも感じるのが次の2つです。
・長期的な視点に立った物件維持とコスト管理
・ニーズに合った客付け対策と判断力
たかが原状回復、されど原状回復。いろいろ突き詰めていくとやり方はいろいろあります。