【1-1】でハウスクリーニングの様々な業態について記載させていただきました。
独立開業をお考えの方はどの業態で開業しようか、悩まれる方もいらっしゃるのではないでしょうか?
ここでは、ハウスクリーニングで独立開業するお勧めの業態についてご説明します。

目次
ハウスクリーニングの開業でお勧めする業態とその理由
ハウスクリーニングの開業でお勧めする業態は、空室クリーニングです。
それには理由があります。
ハウスクリーニングを開業するにあたり、最初に考えるのは空室クリーニングと在宅クリーニングだと思います。この2つの業態には、それぞれメリットデメリットがありますので、営業手法や効率、リスクなど、それぞれどのような違いがあるのか、考えていきましょう。
顧客獲得と顧客管理の違い

空室ハウスクリーニングと在宅クリーニングの最も大きな違いはその名の通り、「顧客」です。
空室クリーニングは、基本的に法人ですが、在宅クリーニングは個人のお客様となります。
お客様が違えば、営業方法や顧客管理も変わってきます。
そもそも利益を生み出せない仕組みのままスタートしてしまう
ハウスクリーニング開業の失敗によくあることですが、仕事はあるが全然利益が出ない、そのうち体力の限界に陥ってしまい、身も心もボロボロになってしまうケースが見受けられます。
新規開拓営業の違い
法人が顧客である空室クリーニングは、電話営業やメールでのお問い合わせ、HP集客がメインとなります。
不動産会社、工務店、原状回復業者などをネットで検索して営業リストを作成しましょう。
電話やメール営業をして、反応があれば一度、試しに一度作業をみていただき、印象が良ければそこからリピート受注が見込めます。頼りにされるようになると、月に複数件のお仕事をいただけます。1社で月に10-20件のお仕事をいただける会社もあれば、月2-3件の会社もあると思います。
まずは、コンスタントにお仕事をいただける会社3社前後の顧客を獲得するできるように目標設定することが望ましいでしょう。
一方、個人のお客様相手の在宅クリーニングの場合には、月に20-25件のお仕事を獲得するには、その件数分のお客様を探す必要があります。まずは、チラシ配布、SNS、HP集客が考えられますが、それだけの件数獲得となると難易度が高く、時間もかかりますので、最初は「マッチングサイト」や「案件紹介サイト」で集客することになります。
既存顧客営業の違い
空室クリーニングの顧客である法人は、年間を通じて安定して仕事の依頼があります。顧客企業は複数の清掃会社とのお付き合いがありますので、その担当者の方の懐にどれだけ入っていけるかが、重要です。
担当者や会社によって、重視するもの、おさえるポイントに特徴があります。いち早くそのポイントを見つけ、その担当者と同じ目を持って、クリーニング完了チェックできるようになると、信頼され安定した受注が見込めるようになります。
在宅クリーニングは、1件1件ごとのきめ細かな管理と提案ができるかどうかが勝負です。
最初は単発仕事の受注でも、その時にその他の清掃ができそうな箇所を把握しておき、適切な時期に再度お伺いの機会を持っていただくなどするといいでしょう。通常、個人の顧客のリピート頻度は年に1回あるかないかですので、顧客ごとにやった内容と時期、提案できる内容とそのタイミングを個人別で管理して、営業をかけるようにする必要があります。
受注内容や仕事の特性上の違い
受注内容の違い
空室クリーニングは賃貸不動産の退去後のお部屋全体のハウスクリーニングとなります。典型的な受注例は、1K-3LDKまでのマンション・アパートの全体のハウスクリーニングで、オプションとしてエアコン内部洗浄、トイレ・脱衣所の換気扇内部洗浄、浴室鏡のウロコ落としなどが一般的です。
在宅クリーニングは、エアコン清掃・水回り清掃(キッチン・浴室・トイレ・レンジフード)がメインで、その他に洗濯機、食洗器などもメニューとして用意している業者もあります。中には、エアコンだけ、トイレだけという単発依頼のお客様もいらっしゃるので、セットで受注できるような提案や、効率の良いスケジューリングなども、大変重要になってきます。
仕事の特性上の違い
空室クリーニングは、基本誰もいないお部屋で自分一人で清掃することになります。お部屋には何もないので、作業はしやすく、ものを壊したり汚したりする心配はあまりありません。コツコツと自分の仕事をこなすことが好きな方には、向いていると思います。落ちにくい汚れや外し方のわからない設備に直面しても、調べて対応したり、頼れる知り合いにやり方を聞いてから対応することも可能です。
在宅クリーニングは、お客様がいらっしゃるので、接客が非常に重要です。清掃のきれいさだけではなく、よい印象を持ってもらう必要があります。中には作業中ずっと話しかけたり、作業を見ながら質問してくるお客様もいらっしゃるので、作業ミスや戻し忘れ、片付けなども漏れないように注意が必要です。
また、生活している空間を清掃しますので、お客様によってはものを移動する時間が必要だったり、部屋を汚したりしないようにする養生は必須です。お部屋にあるものの破損や汚れ等には十分気を付けて作業することがマストです。最近ではペットがいることも珍しくないので、動物アレルギーや犬猫が苦手な方は仕事の制約が必要です。
作業時間は決まった時間にやる必要があり、あまりだらだらと時間をかけることはできません。作業を見られ、接客しながらある程度決まった時間で仕事を終わらせるというのは慣れていない方には少しハードルが高いと言えます。
顧客の違いによる効率の違い

顧客の違いによる効率の違いには、次のようなものがあります。
利益率の違い
空室クリーニングは、基本、自身で自己開拓した法人が顧客になるため、ハウスクリーニングの平均的な利益率70-80%が手元に残ります。
一方、在宅クリーニングの場合には、「マッチングサイト」や「案件紹介サイト」を利用した場合、売上の約20%前後が費用としてかかることが見込まれるため、利益率が50-60%となります。
月の売上50万だとすると利益額10万円前後の違い、月売上100万だと利益額20万円の違いとなります。
作業効率の違い
空室クリーニングは、ごく稀なタイトなスケジュールを除き、時間的な制約が基本ないので、数日間~1週間程度の余裕ある日程をもらえれば、自身の都合でスケジューリングすることが可能です。空室クリーニングは物件の造り汚れ具合で作業時間に差があります。そのため、空きのないスケジュール、作業場所を考慮したスケジュールを組んでいけるようになると効率的な営業につながり経費も抑えることができます。
在宅クリーニングは、作業時間と作業場所がある程度決まっており、基本的にお客様のご都合でスケジュールが決まります。水回りセットなどの高単価の注文は効率がいいですが、単発作業だけの受注や作業場所が離れている場合や、訪問時間が中途半端に開いている場合など、効率が悪い場合も少なくありません。
時間効率の違い
空室クリーニングは顧客が法人であることから、いわゆる「営業」に使う時間が少なくて済みます。当然、最初はその時間の比重が圧倒的に多くなりますが、徐々に顧客となっていただけるところが増えていくと、いつの間にか自身で営業しなくとも安定した営業ができるようになります。また、電話やメール営業で新規の開拓をやっていけることも大きなメリットです。
在宅クリーニングは多くの個人顧客の管理が必要なため、どうしてもそこに時間がとられてしまいます。
新規顧客開拓も自身でやるとなると広告費やそこにかかる労力はなかなかのものです。一番のお勧めは集約できる自身のHPを作成し、SNSなどと併用して集客することです。ある程度の費用と労力は必要ですが、一度作成してしまえば、長期的に見て安定した経営ができるようになります。
トラブル対応の違い

顧客が違えば、トラブルの内容にも違いがあります。
空室クリーニングのクレームとその対応
空室クリーニング特有のトラブルと言えば、元請けから「クリーニングが不十分」とのご指摘をいただくことが、最も多いクレームです。大きく分けると2つあります。
- a.こちらの漏れや作業クオリティが低い場合
- b.お客様の要望が通常レベルを超えている場合
いずれにしても元請けからの指摘がある限り、すぐに是正対応しに行き、是正作業完了報告をする必要があります。
また、a.であってもb.であっても、真摯に受け止め、きちんと謝罪し対応することで、信頼が厚くなります。
b.の場合には入居後のお客様からの要望である場合が多く、50人いれば1人くらいは、クレーマーのような方がいますので、その時は割り切って対応します。その対応は管理会社の担当者もよくわかってくれていますので、誠実な対応をすることで更に信頼度が高くなります。
在宅クリーニング特有のクレームは多岐にわたります。
- 接客が悪い
- きれいになっていない
- 物が壊された、汚された、なくなった
- 作業時間が長すぎ
- 作業道具の置き方
- 道具が汚い
- 事前の説明不足
- 清掃範囲の認識の違い、理解不足
などです。
そのクレームごとに誠実に対応することがもちろん大切ですが、個人のお客様なので、トラブルに発展して多くの時間が割かれてしまうケースなどもありますので、クレーム対応には細心の注意が必要です。
在宅クリーニングの場合には、クレームとならないような事前の防止策が大切です。
空室クリーニングのデメリット

空室クリーニングのデメリットととして、挙げられるものには次のようなものがあります。
- 作業単価が安い
- 作業量が多い
- 孤独な作業
これらについて少し補足説明したいと思います。
作業単価が安い
作業単価に関しては、作業内容や顧客によって様々ですので、単純に比較するのは難しいですが、目安として1.5倍~3倍くらい在宅クリーニングの方が単価を高く設定することができます。
作業量が多い
お客様から依頼のあった箇所のみやる在宅クリーニングに比べ、空室クリーニングは基本、ベランダや雨戸含めたお部屋全体を清掃しますので、作業範囲がだいぶ広くなります。そのため、作業量で比較すると空室クリーニングは在宅の何倍にもなります。
孤独な作業
その場でお客様の感謝の言葉や驚きの声が聞ける在宅クリーニングに比べ、空室クリーニングは誰とも話すことなく作業するので、孤独です。きれいに清掃する達成感はありますが、顧客企業から感謝の言葉があるのは稀で、作業後に連絡がある時は、クレームや是正依頼となります。
まとめ

いかがでしたでしょうか?空室クリーニングと在宅クリーニングの違いについて、イメージできましたでしょうか?
株に例えていうのであれば、空室クリーニングは「ローリスクローリターン」、在宅クリーニングは「ハイリスクハイリターン」。人の性格で例えてイメージするのであれば、空室クリーニングは「堅実なマイペース型」、在宅クリーニングは「明るい営業マンタイプ」でしょうか。
人には向き不向きもありますので、最終的には自分にあったスタイルを選ぶのがいいと思いますが、初心者に限って言うのであれば、空室クリーニングでスタートすることを強くお勧めします。
在宅クリーニングに興味がある方は、まずは空室クリーニングでしっかりとプロの技術とスピードを身に付け、様々な対応力や危機管理能力も備わったと思えるようになったら、手を出してみるといいのではないでしょうか?