ここでは空室ハウスクリーニングの清掃範囲について、ご説明いたします。
一概にハウスクリーニングと言っても、どこまでやればいいのか、意外とわからない方も多いことと思います。

目次
集合住宅(マンション・アパート)の清掃範囲基本的な考え方
集合住宅の清掃範囲は専有部と呼ばれる箇所(玄関ドア内側~ベランダまで)が基本の清掃範囲です。
そのため、共有部である廊下やベランダは対象外となりますが、空室清掃の場合、実は廊下やベランダの一部は通常、清掃範囲に含めております。
その理由として、空室清掃の目的を考える必要があります。空室清掃の目的は、オーナーが入居者を早く決めるために、室内をきれいにしておくためのものです。となると入居検討者、および不動産仲介の担当者が、「?」「汚い」と感じてしまうことのないように、清掃範囲を定めて清掃をしておくということを念頭におくべきでしょう。詳細は後述します。
集合住宅の専有部と共有部
集合住宅の専有部とは、室内のことです。玄関ドア内側~ベランダ窓内側、各窓内側までのことを言います。
ベランダは一見専有部のように思いますが、共有部です。火災や非常時には共用部として使用されますので、私物を置くのは基本的に禁止されています。また、床下や天井の配管、壁内の配線、配管なども室内とみなされ、専有部となります。
一方、玄関ドアの外側、窓の外側、ベランダ、廊下などは共有部です。また、スラブと呼ばれるコンクリートの壁や床、天井、梁は共有部ですので、勝手に穴をあけたり壊したりすることはできません。
ちなみに玄関ドア脇にあるインターホン(送信側)は専有部扱いですが、マンションの管理人室とつながっているような警報機付きのインターホンは半分共有部扱いの場合があります。
集合住宅(マンション・アパート)の清掃範囲詳細
上記を踏まえたうえで、集合住宅の清掃範囲の詳細を記しますと、
(清掃範囲に含むもの)
- 玄関ドア内側~室内
- インターホン送信部(玄関脇にあるもの)
- エアコン室外機(共有部であるが清掃範囲に含めることを推奨する箇所)
- 玄関ドア外側
- 玄関前廊下の一部
- 窓ガラス/網戸の外側
- ベランダ壁、床、手すり、排水溝
- 物干し竿(残置物としてある場合)
- 雨戸内側
- 通風孔外側(ベランダ等にあり、手が届く範囲)
上記推奨箇所は、別料金で清掃されている業者も見受けられますが、発注する側としてはあまりいい印象を持ってもらえない可能性があります。
戸建て住宅(マンション・アパート)の清掃範囲

戸建て住宅の清掃範囲は、集合住宅と基本的な考え方は一緒です。
基本は玄関ドアから内側の室内の清掃ということになります。
ただし、先ほども申し上げた通り、入居検討者が不快に感じないための清掃を心がけるべきですので、次の部分は清掃をしておくべきでしょう。
(清掃範囲に含めることを推奨する箇所)
- ベランダ床、手すり
- 玄関アプローチ付近(照明、ポスト、インターホン含む)~玄関ドア外側
- 窓ガラス/網戸の外側
- ベランダ壁、床、手すり、排水溝
- 物干し竿(残置物としてある場合)
- 雨戸内側
- 通風孔外側(手が届く範囲)
室内清掃箇所の範囲

室内の清掃箇所の範囲について、一般的な清掃範囲の考え方を説明します。
室内については、集合住宅、戸建て住宅ともに同じですが、壁紙や障子、襖などの消耗品と呼ばれる備品を除いて、「難しい分解を必要としない目に見える範囲」ということになります。
そのため、基本清掃範囲は、次の部分となります。
(基本の清掃範囲)
- 建具、設置備品類
- 照明、照明カバー
- 換気扇、換気扇カバー内(外側のみ)、通風口
- コンセントプレート、コンセント差込口、スイッチ、ブレーカー等
- キッチン、ガスコンロ、レンジフード、水栓金具、水回り、排水溝、排水口、排水トラップ、洗面台
- レンジフード分解洗浄(清掃業者によってはオプション扱い)
- トイレ便器、便座、温水洗浄便座、ペーパーホルダー、タオル掛け
- 浴室、水洗金具、浴室エプロン内(外せる場合のみ)、排水口、タイル目地、換気扇、換気扇カバー、照明
- 窓ガラス/網戸(両面)、雨戸(内側)、サッシ類
- エアコンカバー、フィルター、各種リモコン
- 壁(クロス除く)、床
- ベランダ、エアコン室外機、排気カバー類
(オプションでやる箇所、元受けに確認してやるべき箇所)
- トイレタンク内
- エアコン分解洗浄
- 食洗器、洗濯機、その他の家電製品
- ベッド、ソファー、デスク、椅子など家具家電があるお部屋
- 戸建ての庭や敷地内の雑草、カーポートや物置など
- タワーマンションなどの高級物件や最近の戸建て物件は、食洗器や洗濯機が備品としてある場合があります。
また、照明や棚が多かったり、下駄箱やクローゼットなども大きいので、通常のマンションなどよりも時間がかかるため、少し高めの単価で清掃代金を設定することが一般的です。
清掃範囲に関する補足説明

上記は一般的な空室ハウスクリーニングの清掃範囲について、解説したものです。
ただし、実際は清掃業者、マンション管理会社、オーナー、または物件の環境や状況でその内容を確認しなければならない場合もあります。
空室クリーニングは基本的にはマンション管理会社や原状回復業者、工務店などからのご依頼になると思いますので、取引先ごとに初回の取引開始時点で、どこまで清掃範囲とするのか、もしくはオプションとして受けるのかなどを確認しておく必要があります。
また、環境や状況で確認すべき場合とは、上記に記載のないもので、どうしたらいいのか、迷うものがある場合などに直面します。
例えば、マンションの大規模修繕工事中で外壁塗装のため、網戸がビニール袋に入れられて、室内に置いてあるとか、共有部に宅配ボックスが置いてあり、捨てるものなのか備品として置いてあるものなのか、わからないなど、いろいろな場合があります。
そのような時には、必ず、元請けに確認し、あまり面倒なものでない限り、基本の清掃範囲として、できるだけ料金内でやってあげるようにすると、それは単なる「清掃」から、元請けから信頼を勝ち取る「大きな営業ツール」に昇華したりします。
清掃範囲は基本として理解すべきことは、とても大切ですが、だからと言って「そこは範囲外」「それはうちではやらない」ばかりを主張するのではなく、日常の清掃自体が営業行為の一環なんだという意識をもって、仕事をするようにすれば、必ず信頼を積みあげていくことができますので、柔軟に自分の清掃範囲をコントロールしていくことをお勧めいたします。
まとめ

空室クリーニングの清掃範囲、いかがでしたでしょうか?
次のようなポイントがありました。
- 空室クリーニングの基本の清掃範囲はしっかりと理解をした上で
- 空室クリーニングの目的、元請けの要望を把握し、
- 自社の基本清掃範囲、オプションで範囲を明確にする。
- イレギュラーな状況では、元請けに必ず確認し、
- 場合によってはイレギュラーな対応をサービスすることが、強力な営業ツールになることもある。
ということになるかと思います。
空室クリーニングの考え方の一助になれば幸いです。